不動産には所有権以外の権利がつくことがあります。皆様は抵当権という言葉をご存知ですか?
不動産に関わっていなくても抵当権という言葉は聞いた事があると思います。皆様が所有権以外の権利に関わるとすれば、抵当権が一番多いでしょう。
例えば、新しく土地や建物を購入する際に売買代金全額を現金で支払うことが出来れば問題ないのですが、なかなかそうはいきませんよね?おそらく銀行などから融資を受けることになるのですが、その際に銀行側は多額の融資の代わりに担保を要求します。その担保権として代表的なものが抵当権になります。
抵当権を設定することで、返済が困難になった場合に不動産の時価評価から優先的に返済を受けることができるわけです。
抵当権を設定することは、所有権以外に権利がつくことになります。この場合、登記記録の権利部-乙区に詳細が記載されます。
抵当権設定契約は通常、債権者(抵当権者)と債務者(抵当権設定者)で行われます。なお抵当権設定者が必ずしも債務者と同じとは限らず、第三者が抵当権設定者になることもあり、この第三者を物上保証人と呼びます。
新しく不動産を購入する際の多くの場合は、所有権移転登記と一緒に抵当権設定登記をします。ですので、抵当権設定登記を単独ですることは少ないといえます。
銀行など融資元へローンを完済したときは、抵当権抹消登記が必要になります。抵当権抹消登記は融資先から案内と必要書類がもらえるだけで、手続き自体は皆様が行うことになります。
まずは必要書類が全て手元にあるか確認しなければなりません。
@登記原因証明情報
登記の原因となった事実または行為及びこれに基づき現に権利変動が生じたことを証明する情報です。抵当権抹消登記の場合は、抵当権解除証書などがそれにあたります。
A登記済証もしくは登記識別情報
抵当権設定登記をした際に抵当権者(債権者=融資元)に交付されている登記済証(抵当権設定契約書に登記所のハンコが押されたもの)もしくは登記識別情報です。この二つの違いは、管轄する法務局がオンライン庁か非オンライン庁かによって変わってくるものであり、順次登記済証から登記識別情報へと移行していくものです。登記識別情報とは、12桁の英数字からなるパスワードのことです。
B資格証明書
登記権利者(所有者)または登記義務者(債権者)が会社などの法人である場合には、法人の代表者の資格証明書(法務局が発行する「代表者事項証明書」もしくは「現在事項全部証明」などがそれにあたります)が必要になります。またこれらは発行から3ヵ月以内のものに限ります。
C変更証明書
抵当権設定登記をした後に抵当権者(債権者)の住所などに変更がある場合には、変動があった旨を記載している「登記事項証明書」が必要になります。
D代理権限証書
抵当権抹消登記の申請を司法書士などに委任した場合には、委任状が必要になります。
■根抵当権■
抵当権と同じ担保権の一つに、根抵当権というものがあります。
抵当権と根抵当権の違いは、抵当権が「特定の債権を担保するもの」であるのに対して、根抵当権は「一定の範囲の不特定債権を極度額の限度において担保するもの」です。
簡単にいうと、抵当権は、その担保の対象となる債権はひとつだけです。抵当権の代表例である住宅ローン債権も住宅を購入するときに一回だけ(一つだけ)借入をしますよね。
これに比べて根抵当権は一定の範囲内であれば、いくつでも債権を担保の対象とすることができます。
例えば、銀行との間で債権の範囲を「金銭消費貸借取引」、極度額を3000万円とする根抵当権を不動産を担保に設定した場合、その銀行からお金を借りた回数が何回であっても3000万円までは不動産が担保することになります。つまり、銀行から10回お金を借りて、総残額が4000万円の時点で返済不能になったら、銀行が不動産を売却して、売却代金の中から3000万円までは回収できるという権利を持つということです。
抵当権も担保であるのには変わりありませんが、根抵当権はその範囲が抵当権より広いため債権者寄りの担保であるといえます。
なお、根抵当権は企業間などに多くみられ、個人での設定は多くありません。 |